【手術当日②】痛い痛い痛い
点滴から全身麻酔を入れられると、すぐに頭がグワングワンしてきて意識が飛びます。そして目が覚めると手術は終わっている。
周りの声が聞こえ始めると同時に襲ってくる激しい痛み。
『お腹に力入れないで』と声が聞こえるが、あまりの痛さにもがいてしまう。
そして自分が激しく震えていることに驚く。
痙攣しているのではと思うほどの震えだ。
止めようと思っても止まらない。
寒い手術室に裸でずっといたのだから冷えきっているのだろう。
『寒いですか?寒いですか?』としきりに聞かれるが、私の答えは
『痛い』
か細い声でなんとか答えた。
何を聞かれても『痛い』としか答えられなかった。
痙攣のような激しい震えを伴う寒気よりも、とにかく痛みだ。
これをなんとかしてくれ。
経験のない痛み。
何て説明したらいいのだろう。
お腹をショットガンで撃たれたらこんな感じなのかな。
経験はもちろんないがそんな感じだ。
そして1人の看護師の言葉が私の不安を煽る。
『これ、○○○じゃない?』
専門用語で意味はわからなかったが、術後の何か悪い症状のことを言っているニュアンスだった。
『38.5℃』
熱もあるようだし、痛いし、震えるし、やっぱり何か良くないことが、とも思ったが、○○○を疑った看護師を肯定する者がいなかったし、震えも徐々に小さくなった。
結局、手術は成功で何でもなかったのだが、不安を煽るような言葉はやめてくれ。
動けなくても聞こえてるんだからね。
術後、運ばれたのはナースステーションに近い部屋。
集中治療室とかではないんだね。
痛み止めが効いてきたのか、なんとか耐えられるレベルにはなってきたが眠れない。
いや、寝たのかもしれないがよく覚えていない。
気付いた時には震えは止まっており、逆に異常に暑くなってきた。
熱があるとき薬飲んで寝ると布団の中が暑くて大汗をかくあの感じだ。
暑さに耐えられなくなりナースコールしようとしたがボタンの場所がわからず、なんとか自分で布団をのけようとするが痛みで無理だった。
痛みだけでなく、管だらけになっている体では怖くて下手に動けない。
大きな声も出ない。
しばらく耐えていると、カーテン越しの隣の患者がナースコールした。
これはチャンスと思ったが、声が出ない。
元々、地声が小さく、さらに酸素マスクをしている状態で、術後の弱った声では隣まで届かなかった。
しかし、隣の患者が『お隣、暑いってよ』と言ってくれたのだ。
ずっと暑い暑いと寝言のように言っていたのが、お隣さんは聞こえていたようだ。
助かった。ありがとう、お隣さん。
看護師に布団をはいでもらい、ナースコールのボタンは手元に置いてもらう。
こうして暑さから解放されると、今度は痛みだ。
定期的に痛みが強くなり、その度にナースコールし痛み止めを入れてもらう。
この痛み止め、手術前に背中に入れた硬膜外麻酔の管から入れていて、実はなんと自分でボタンを押して自分で入れられるのだ。
それを教えられたのは翌朝。
それまで夜中は何度もナースコールして入れてもらっていた。
なんだよ早く教えてくれよ!
術後の夜はこんな感じであまり眠れなかったが、痛みだけじゃなく、寝返りが打てないのも地味にきつかった。
なんとか痛みレベルが低いタイミングでちょっと斜めになるくらいで断念。
管が体のどこに繋がっているのかわからないので、つぶさないように気を付けて動かなければならないし。
それから心拍数とか血圧とかを監視する機械が途中から壊れて、ずーっとエラー音でうるさかったのもきつかった。
ドラマとかでもよく見る、数値に異常が出ると音が鳴る仕組みのアレだが、異常がないのに音が鳴ってしまうのだ。
止めてもしばらくするとまたエラーになる状態。
何度か止めにきた看護師も諦めたようで、朝まで鳴りっぱなしとなった。
お隣さんもうるさかったことだろう。
こんな中、眠れるわけがない。
こうして痛みと音に耐え、朝を迎えた。
後で聞いたのだが、家族が担当医から説明を受けたのが17時頃だと言っていたので、手術開始が13時頃として3~4時間ほどで終わったようだ。
これは手術前に聞いていた予定通りの時間だった。
出血も少なく、輸血はしなかったとのこと。
開腹手術したら輸血するものと思っていたが、そういうものではないらしい。